元服曾我(曽我物語②)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 《内容概略》  文治元年(元歴二年(1185))正月十三日に鎌倉殿(源頼朝)箱根(神社)詣とぞ聞えける。 さる間、箱根山の稚児の箱王(後の曽我兄弟の弟五郎時宗)は、頼朝の箱根参詣の行列を見物していた。 1 箱王、敵祐経を探す  この中に父親の仇である従兄弟の工藤祐経がいると知った箱王は、祐経を探すために小師(受戒して間もない小僧)の式部に諸大名の名前を…

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笈捜(おいさがし、全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 富樫の館を無事通過  さる間、武蔵坊弁慶は富樫が館にて勧進帳、奉加帳(寄進名簿)をことごとく読み上げれば、富樫よくよく聴聞あって、あら殊勝(素晴らしい事)や候、実に南都の勧めにて御座ありけるを存じ申し、さて一時なれど白州に立たせ申しつる事、さこそ神仏三宝も憎しと思し召しつらん。  こなたへ御入り候へとて中の出居(客間)へ請ぜらる、武蔵今は安堵の思いをなして…

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馬揃(うまぞろえ、全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 廻文  さる間、平家打倒を決意した源頼朝は、安達藤九郎盛長を召され、この間の事どもは夢現の縁起の良い吉事、文学(遠藤滝口盛遠、出家し文覚)の占の示す所(頼朝の足音から運命を占った文学の占の示す通り)、天命ここに所願して、(見えてきた)果報の花の蕾(つぼみ)出で匂(におい)渇仰(尊び敬う)風情なり。  明夢(安達藤九郎盛長の見た、源頼朝が征夷大将軍になる明確…

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硫黄が島(俊覚、全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 清盛、流人二人を赦免  ここに門脇の平宰相教盛(平清盛の異母弟)が、折を得て小松殿(平清盛の長男重盛邸)に参り、内大臣(平清盛の長男重盛)に申されたのは、その人の嘆きを止め給わねば身の喜びも有らぬべし、薩摩潟の硫黄が島の流人の事。  如何に大臣(平清盛の長男重盛)聞し召せ、この度后の宮の御入胎に非情の大赦(赦免)を行わるべき由承る、是は何にも優れたる御祈祷…

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夢合せ(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 盛長の夢物語  さるほどに、(源頼朝側近の)安達籐九郎盛長は、まだ朝も早いうちから頼朝の御前に出仕した。  君(頼朝)は、未だ寝所に居られるのに間の障子を開いて、安達盛長が出仕申して候というと、源頼朝が聞し召され、いついつよりも安達盛長殿の今朝の出仕の早さよと理由を尋ねると、安達盛長曰く、さん候、昨夜それがし不思議な夢を見ました、確かな夢物語を申さんために…

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百合若大臣

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 《内容概略》 1 百合若の誕生  そもそも昔、我が朝に嵯峨朝の御時、左大臣公光(きんみつ)という比類なき立派な家臣が一人居た。  しかし公光には御子がなく、そこで大和の国初瀬の寺(長谷寺)に、無限の慈悲心を持つ観音の御利益を得るため三十三度詣でをして子宝が授かることを祈願した。  観音への願掛けが早くも叶ったのか程なくして御子を授かり、それは男子であった。…

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清重(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 清重、義盛廻文の使者  判官(源義経)は、武蔵坊弁慶を召され、いかに武蔵坊弁慶よく聞け、諸国の大名や武家の名門たちの中にも、源義経の事を心にかけてくれている人もいるであろう、急ぎ廻状を大勢の人に回覧し兵を頼んでみようではないかとの御諚なり。  武蔵坊弁慶は承り、この廻状を書て参らせければ、判官(源義経)、御判を据えさせ給ひて、さて廻状での使者には誰がよいか…

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木曽願書(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】  (源義朝の弟源義賢の子木曽義仲は、一族の争いで1155年父が殺害された後、源家再興を願う木曽の豪族中原兼遠に養育され、1180年四月後白河法皇の三男以仁王が各地の源氏に平家追討令を発したのを受け、中原兼遠の子の樋口兼光、今井兼平、巴御前らと旗揚げする。) 1 義仲、信濃を出て越中へ進撃  ここに信濃の国の住人、木曽の冠者義仲は平家を攻めんそのために、五万余騎…

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小袖曾我(要約版、曽我物語④)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 《内容概略》 1 祐成、母に時宗の小袖を乞う さる程に曾我兄弟の人々は富士野の狩場に出立するにあたり、今生の別れと暇乞いのために母上の所に参らるる。  兄十郎祐成は、弟五郎時宗には暫く控えていて下さい。まず私一人で、勘当許しの嘆願をしようと母上に面会し、富士野への暇乞いを申された。  母上から、富士野とは雪の多い所だと聞く、夜は寒いだろうと小袖を下されたの…

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鞍馬出

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 鞍馬寺での夢見  さても六波羅の御所には牛若殿の悪行の身に余ると聞し召し (日々武芸に励む牛若の行動は問題視され始め) 、御一門さし集まって御評定はとりとり也。  彼のもの労いたし(世話をしていたわってやりたい気持にかられる)者ならば当家のゆゆしき大事たるべし、打ち捨てるか、忍びて流すか、何とぞ評定ある。  母の常盤は聞し召し、あるにあられぬ(生きていこ…

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