烏帽子折(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 牛若烏帽子折を尋ねる  そもそも安元元年三月中旬に、源の牛若殿、鞍馬の寺を御出であり。  今日喜びに近江(喜びに、あう身を掛ける)なる野路の宿にて、(三条に住む)奥州の金商人吉次信高に行き合せ給う、その日の泊りは鏡の宿(滋賀県竜王町の宿駅)、吉次の宿は菊屋と聞こうる。  鏡の宿の遊君、歓迎の酒肴を用意し吉次殿をもてなす、さる間、吉次羽振りをきかせた態度で…

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笛の巻(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 牛若、母の贈り物の笛を習う  さる間、牛若殿、鞍馬の寺(の僧房の一つ)東光坊にて学問究め給ふ。筆をとっての筆法(筆の運び方習得)に、魚鱗・虎爪(こそう)、水露の点、孔子、老子の筆の跡、文書(書状を書く際の文体について説いた書物)の数を残さず習ひぞ究め給ひける。  (「筆法之得伝」と号される手本に漢朝王羲の懸針、 垂露、 返鵲、 廻鸞、 魚鱗、 虎爪の6様図…

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景清(全文版)

【幸若舞曲一覧(リンク先)】 1 東大寺供養の警備陣  この度、頼朝の御代を召されし由来(征夷大将軍の院宣を受けたこと)を詳しく尋ねるに、御舎弟九郎御曹司(源義経)の御心猛く渡らせ給う由来なりとぞ聞えける。  かくて、建久元(1190)年に源頼朝初上洛してから二度目(建久六年)の御上洛をされ、同じく奈良東大寺の落慶供養を展(の)べ給う(平家滅亡からまもなく、源頼朝は源平合戦で焼け落ちた南都…

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